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レイ・ハラカミのこと

 僕が初めて「レイハラカミ」という人を知ったのは、くるりの「ばらの花」をリミックスしたときでした。同じ世代だと、結構こういう人多いと思います。第一印象は「変な名前」なんですよね。

 「ばらの花」は原曲が大好きなので、リミックス苦手の僕も普通に聞けました。
 でも、その後、いざ「レイハラカミ」という人の音楽を聴いてみると、どれもこれもが同じに聞こえました。
 電子音楽は好きなのですが、恐らくこれ、今後継続して聞くことはないのかな、と思いました。

 ところが、折に触れ、ハラカミさんの音楽は僕の耳に入ってきました。好む、好まざる関わらず。
 で、ある時、テレビから流れてきた曲を聴いた時に「あ、これ、レイハラカミ」と感じたのです。
 正解でした。聞いているうちに、音だけでハラカミさんだと認識できるようになっていたんですね。

 ハラカミさんは、音をSC-88proというローランドのアナログシンセを使って作ります。
 僕の記憶が正しければ、SC-88proは20世紀には既に存在したはずです。つまり、ハラカミさんは既に時代遅れとなったSC-88proを使って音を作り上げていました。その制約がハラカミさんの音をハラカミさんの音だと認識させていた一因ではあったと思います。
 でも、実際はそんなのと関係なく、ハラカミさんの音は唯一無二でした。こういうと大げさに聞こえるかも知れませんが、色に音が付いて見えるのです。人それぞれでしょうけど、僕には七色の光が波紋のように広がり、波紋同士が干渉して海面の様な複雑な模様を作り出す…というように感じられました。
 勿論、曲によってはその模様は至ってシンメトリーだったりしますし、そうでない場合もあります。

 その後、ハラカミさんの音をいろんな所で聞くようになりました。最近、聞いた有名所はサカナクションのネイティブダンサーをリミックスしたものでしょうか。ですが、ハラカミさんを見る機会は本当に全くなく、名前を聞いてから十年以上経っても、一度も見た事がないままだったんです。

 初めて見たのはつい最近、2011年5月28日に笠間で行われた、Sense of Wonder 2011 の時でした。
 元々は、タブラ奏者 U-zhaan の単独出演で、どうしても U-zhaan 見たかったので見に行く事にはしていたのですが、開催の2週間程前になってでしょうか、 U-zhaan x rei harakami としてパフォーマンスする事になったからです。
 当日、 U-Zhaan x rei harakami はセカンドステージ、 Sun Shower Field のトリでした。
 ハラカミさんとユザーンの演奏はとてもいい意味で肩の力が抜けており、大概、前のめりに音楽を聴く僕にはとても珍しく、リラックスして聴くことが出来ました。
 大友良英さんを加えての、ゆるゆるテクノポリスなんて最高でした。演奏中なのに思わず笑いがこぼれてしまう程。あまりにぐだぐだなユザーンにあきれて、巡礼ジャージを着たハラカミさんが「アサチャーーーン!」と叫んで ASA-CHANG に助けを求めていた声、今でもはっきり思い出せます。
 とにかく、たった一回、ほんの少しの時間でしたが、とても楽しかった。最高でした。

 名前を聞いてから初めて見るまでに 10 年以上は経過していましたが、二度目はほどなく訪れるはずでした。
 僕にとって夏の恒例行事、ROCK IN JAPAN FES 2011 にハラカミさんが yanokami (矢野顕子 x rei harakami) で出演することになっていたからです。裏で超強力なラインナップがあればキャンセルかな…と思いましたが、その時間帯、裏は僕が見たいアーティストではなかったので、その時間は yanokami を見る、と決めたんです。
 でももう、rei harakami を見る事は出来ません。たった一度だけでしたが、あんなに楽しそうに演奏していた rei harakami を見る事は、もう二度とないんです。


 フジファブリックの志村正彦が亡くなったときも似た様な喪失感を味わいました。でも、今回はそれ以上に辛く感じます。志村正彦の作った曲は、他の誰かが演奏すればまた生きるでしょう。
 例えば、奥田民生が演奏すれば志村正彦奥田民生のテイストを含んだ曲になり、曲に新たな命が吹き込まれるはずです。勿論、志村正彦の死が悲しくない訳ではありません。今でも「茜色の夕日」なんて聞くと少し思い出して、少し涙ぐんでしまいます。
 でも、ハラカミさんの曲は、他の人が同じように演奏しても、ハラカミさんの音にならない。同じ旋律を他の人が演奏したとしても、どれだけ曲を似せようともハラカミさんの音ではないのです。ハラカミさんの曲は、その音の表情まで含めてハラカミさんが色濃く出ていました。

 ただ一度とは言えません。これから先、何度でも何度でもハラカミさんの演奏を見たかった。曲を聴きたかった。
 ただ、ただ、残念です。