Amazon.co.jpで僕が使っているビデオミキサー、V-4ex についてこんなレビューを見つけた。
「HDMI対応とありますが、内部では480p処理されます。
つまり実質的にHD画質のたった1/7の画素数のSD画質で出力されます。
外側は新しくなってますが、中身はほとんど、V-4にHDMIを取って付けただけ。
性能的には10年前の物です。
もっと高機能、高性能なPCのVJソフトの方がはるかに安く買えます。これは全く不要な機材です。」
「この値段で480p、これは要らない
今時、この金額出して誰がこんな機材買うでしょうか?VJはPC1台あれば間に合います。
切替は、ディスプレイ切り替え機があれば十分です。この画質劣化装置に価値はありません。
エフェクトだってVJソフトがあれば、機材は要りません。」
と、いうamazonのレビューへの精一杯の反論。
V-4ex、気に入らないところはあるし、他に代わりになるものがないというのもあるが
ここからは個別に反論。
「中身はほとんど、V-4にHDMIを取って付けただけ。性能的には10年前の物です。」
まず、現在のV-4の値段を見てみようかな。
サウンドハウスで102,900円。V-4exは169,800円。確かに高い。
でもここにパソコン入力を使おうと思うと、V-4の場合は別にスキャコンが必要。
安いものでも1入力につき2000円くらい。それが4つ(V-4はアナログVGA入力ないからね)
そこまで含めても確かにV-4の方が安い。
でも、スキャコンそんなに持ち歩きたいですか?(笑
別途スキャコンには電源も必要だったりしますし。
それにしてもまあ、価格差は6万ありますけど…。
「切替は、ディスプレイ切り替え機があれば十分です。」
これは完璧なめてますね。
ディスプレイ切り替え機、フレームシンクロナイザー内蔵されてます?
入力ソースが全く同じものを使うのであればとにかく、ソースが違えばそう簡単に同期取れません。
Vinylも溝読める人がいる位ですから、映像の同期信号を完璧に読める人もいるのかもしれませんけど、僕は無理です。
さらに、ディスプレイ切り替え機はあくまで「切り替え」ですからフェード掛けたりできませんよね。
二つの映像をMIXするとかできないわけです。これもVJソフトがあれば問題解決なのですが、VJソフトはVJソフトで問題があります。
色々呼び方があって混乱してしまいそうなのですが、僕は
フレームシンクロナイザーがなく、ボタンでソースを切り替えるだけ … 切り替え機
フレームシンクロナイザーが搭載されていて、ボタンでソースを切り替えるだけのもの … ビデオスイッチャー
フレームシンクロナイザーが搭載されていて、フェーダーでソースのミキシングが出来るもの … ビデオミキサー
と呼ぶことにしています。
「VJソフトがあれば大抵は事足ります」
確かに「大抵は」。
でも、ソフトウェアなんですよね。しかもVJソフトはかなり負荷がでかいです。
他のソフトを全て落とし、VJソフトだけにした状態でもかなりの負荷。エフェクトもっと重いです。
実際、VJソフトでクロマキーなんてかけながらやってると、動画がコマ落ちすることあります。勿論、Core i7とかに買い換えちゃえばいいんだけど…あれ?そしたらスイッチャーに手が出る値段じゃないですか?
VJソフトのみクリーンインストールした環境であっても、VJソフト自体がバグ等で止まってしまう事があります。
その場合のバップアップ回路として、ハードウェアのビデオスイッチャーは優秀。
一旦画面をブランクにしたり、とりあえずの別ソースに切り替えておいて、その間にVJソフトを再立ち上げ、ソースを元に戻すという手段が採れます。
VJソフトだけの場合、一旦WindowsなりMacなりのデスクトップが表示されて、VJソフトのスプラッシュ、映像出力…と。こうなると一瞬、観客を現実に戻してしまうのです。これはライブハウスやクラブでは絶対に避けたい事態です。
そういう保険がない限り僕は不安で仕方ありません。
DJだってPCDJが止まって音が出せなくなったら、その瞬間DJが止まるわけです。
確かにハードウェアのスイッチャーでできることはVJソフトで可能です。
ただ、VJソフトだけですべて事足りちゃう…等と言ってしまう人はもう、どうぞご家庭でひとりVJされたらよいと思います。
そのリスクを承知の上でイベントVJやる人は全く構わないのですが、これを書き込んでいる方は「VJソフトは万能だから、ハードウェアなんていらない!」といていますので、それは全然違うぞと言いたいのです。
ただ、amazon.co.jpのレビューも全くの的外れというわけではありません。
レビューでも触れられている通り、入力がHDであっても、内部的にSDにされてしまう。これは欠点です。
HD画質がSDになってしまうのはこの方々のおっしゃる通りで、仕様書を見ても「4:2:2(Y/Pb/Pr)、8ビット(内部処理:NTSC設定時は480/59.94p、PAL設定時は576/50p)」と書いてあります。
つまり、Inputのソースが4Kだろうと、Outputの設定を1080pに設定しようと、内部的にはSD画質になってしまうので、結局はSD画質なのです。
VJとして求められる映像の質は、実際はそれほど高くありません。
映像に並々ならぬこだわりを持つアーティストだったり、映像主体のイベントだったりしない限りは都内の大箱レベルであっても、SD画質で十分対応できます。
と言うのも、一般的な会場ではプロジェクターへの入力がHDMIであることがほとんどないからです。自分ですべて用意するならばとにかく、開場備え付けのプロジェクターへの取り回しはコンポジットであることがほとんどです。
また、僕はやったことありませんが、オーロラビジョンのような電光装置に出力する場合でも、それほど高解像度のオーロラビジョンって見たことありません。
実際に一昨年STUDIO COAST、昨年ebisu LIQUID ROOMで機材持ち込みでやった時やった時もSD画質で何ら支障が有りませんでした。
というのも、プロジェクターの場合はプロジェクターからの投影がスモーク等の空気に邪魔されたり、そもそも投影距離およびお客さんとスクリーンの距離が遠くてそこまでの画質が判断できなかったりするためです。
そうでない場合もあるかとは思いますが、そっちの方がレアケースだと思ってよいでしょう。
ただ、的外れでない、というのは高画質であって困る理由も特にないからなのです。むしろ高画質であってくれた方が嬉しい。
というか、高画質であればそのほうが嬉しいわけです。画質を落とすことはさほど難しくありませんが、画質を向上させることは…何を持って画質向上とするかですが…不可能です。
高画質を高画質のまま出力できるのであれば、それはいいことではあれ、悪いことではありません。
僕はHDMIを入力として扱える…つまり、スキャコンなしでMacやPCとの接続がケーブル一本で済むという点、元々使っていたのがV-8だったのでインターフェイスが同じであること、そして何よりUSBでMacへの入力として使える事…V-4exの出力をコンピュータ側で映像入力として扱い、USTREAM PRODUCER等で配信できる…という点がありこれを購入しました。
問題は、VJにとっての選択肢はV-xシリーズ以外にないという事です。
全てソフトウェアで代替できる、こんなものいらない、という点においては僕は納得できませんが、少なくともV-4exでなければならないという事はないのです。
もちろん他にスイッチャーはあります。しかし、価格が個人的に手に入る価格ではない。
KORGのKrossFourはフレームシンクロナイザ内蔵であの価格(実売6万程度)だったので、これがいまあればよかったのですが…現在は製造されておらず、入手も困難です。
他に選択肢があればまた違うのですが、V-xシリーズがいくら高かろうと、現時点ではこれ以外に選択肢はありません。
確かに、個人的にVJをやったり、友達のイベントでVJをやる分にはVJソフトのみで十分でしょう。
しかし、VJとしてのスキルが高くなり、より大きいイベントに出演したり、プロと競演するようになってきた場合、ハードウェアのビデオミキサーは必須であると感じますし、ソフトウェアの信頼性を上げるよりは安価で対費用効果は高いのではないかと思います。