さよならブラックバード

水戸市南町にあるイタリアンのお店。

trattoria blackbirdが間も無く閉店する。

 

初めてblackbirdに行ったのは2011/07/08。

僕が「何かやらなきゃ」と思ってDJを始めようとしていた時だった。

どうやってお店を見つけたのかはもう覚えていなくて…多分フリーペーパーかなんかで見たんじゃないかと思う。webだったかも。twitterだったかも。

とにかく、それくらいふわっとした感じで自然に立ち寄ったお店がblackbirdだった。

 

Swarm(昔はFoursquare)に記録があるだけで75回。チェックインしていないのもかなりあると思うので、おそらく100回前後はお邪魔しているはず。

仮に75回だとしても、平均で月に一度はご飯を食べに行っていた計算になる。

多分、自分で選択したお店でここまで通ったのは先にはblackbirdだけだと思う。

 

なんでだろう。なんでそこまで通ったのだろうか。

わかりやすく理由を探すのに、blackbirdの好きなところを挙げようと考えた。

 

だけど、それがとても難しい。

 

落ち着いた雰囲気も好きだし、流れている音楽も好きだ。

働いている人たちの人柄も素晴らしいと思う。

そして一番大事なことだけど、食事が美味しい。

細かいことを言えば、リーズナブルなお値段、料理の待ち時間のちょうど良さ、メニューの種類のちょうど良さとか・・・挙げたいところはたくさんある。

(ちなみに、待ち時間というのは短ければ短いほどいいというものではない。もちろん長いのが良いわけでもない。メニューも同じ。どれもこれも、お店にあった時間、メニューの量がある)

 

とにかくお店の要素全てが僕にとっては心地よかったのだ。

噓っぽくしか聞こえないから言っていいものか迷うのだけれど、こう言うしかない。

他の言葉が思いつかないのだから。

 

僕はblackbirdの全てが好きだった。

 

僕が行くのは週末のランチが多い。頼むものは決まっている。Cセットパスタ。

今はウイークエンドランチと名前を変えてしまったけど、前菜とグリーンサラダのプレート、パスタにドリンクのセットだ。

ドリンクはいつもエスプレッソにする。

フジオさんやタグチさんがいた頃はシェケラートにしてもらうこともあったけど、ホシノさんに変わってからはエスプレッソ一択。少し砂糖を入れてゆっくり混ぜる。そして香り、苦味、甘味を楽しむ。

エスプレッソを飲み終わると、お会計をして、ごちそうさまでしたと声をかけて出てくる。

 

決して話をしないわけではないけど、沼田さんと話すことも多くなかったと思う。

たまに一言二言「これ、オリジナルの曲じゃないですよね?」とか、その程度。

もちろん仲良くしたくないわけじゃない。

でもあの場においてはお店のシェフとお客。

フレンドリーなお店が嫌いなわけじゃない。だけど、blackbirdでのその距離感がとても心地よかった。

そしてそれは誰にでもそうしていたわけじゃ無く、僕にとってはそれがいいと思ってそうしてくれていたのかな、と思っている。

 

僕が水戸で「何か」を始めようと思い、それが音楽的な活動になり、VJになった。
そしてそれを僕が続けてきている間、水戸にはblackbirdというお店があった。

誰にも相談できないことがあった時に行くと、いつものように沼田さんが料理を作っている。

歴代バリスタ、フジオさん、タグチさん、ホシノさんがドリンクを作ってくれる。

とりたてて相談をするわけではない。

ただ料理を食べ、エスプレッソを飲み干し、原点に立ち戻る。

その度に、もう一度、まだできる。と、そう思えた。

 

僕の活動の中に、blackbirdはあった。

 

2011年から今日まで、間違い無く僕の一部だったお店。

きっと今頃、最後のイベントがとても盛り上がっているんだろう。

本音を言えばすごく行きたい。でも、明日は仕事だ。お別れを言いたい人も多いのに、僕なんかが行ったら多分迷惑だろう。

 

それに、僕にとってのblackbirdは昨日のランチが最後と決めていた。

普通に食べに行って、いつものメニューを注文し、エスプレッソを飲んで出てくる。

そして帰る時に、いつもより一言だけ多く、これだけは言おうと決めた言葉を告げ帰ってきた。

 

「ごちそうさま。ありがとうございました。」

 

と。

 

沼田さん、長い間お世話になりました。

どうぞ、山形の地でも美味しい料理を。

 

そして、口約束にならないように、本気の約束をしておきます。

いつか、山形にもご飯を食べに行きます。

今までのように通ったりはできないでしょうが、必ず。